初めてのアルバイト

高校一年生の夏休み、友人に誘われ初めてアルバイトをした。

朝４時から７時までの３時間、市場の青果店で働くバイトだった。仲買人や小売店の人が買い付けた青果をその人たちの車まで一輪車やリアカーで運ぶ仕事だった。

市場の仕事は楽しかったが失敗もあった。店舗が立ち並ぶ人混みの中、荷物を運ぶのでスイカをぶつけたり、メロンを落としたりすることもあった。

ある時、２０個ほどの桃を車に積む際に箱ごとひっくり返した。桃は散乱したが汚れていなかったのでそのまま箱に詰め直し、なかったことにした。

３０分ほどした時、桃を買い付けた人が「おたくのあんちゃんが桃をひっくり返したらしいので交換してくれ」と青果店の主人に言って来た。ばれたか。誰かが見ていたようだ。

青果店の主人は謝罪して新しいものと交換した。そして私に「桃は触ったり、傷ついたりしたところから腐るんだから落としたときは正直に言ってくれ」とお客の前で言った。お客さんからも「桃は腐りやすいんだよ」と言われた。お店の信用に傷を付けたと思った。

お客さんが帰った後、反省していた私に青果店の主人が笑いながら「気にするな」と落とした桃をまた陳列棚に戻した。「えっ、また並べていいの」？当時はまだ純真だったのでそう思った。

初めてのアルバイト、いろいろ勉強？になった。それ以来、桃を買うときは吟味している。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　買わないのに触ったらだめだよ